年七月より実施せらるゝことゝは為りぬ。先生は此有様を見て恰も強有力なる味方を得たるの思いして、愉快自から禁ずる能わざると同時に、又一方を顧みれば新条約実施の期限は本年七月と定まり、僅々一年の後には外国人も内地に雑居して日本人と郷党隣人の交際を為すに至る可しと言う。従来の儘《まま》なる我国男女間の関係を彼等の眼前に示して其醜態を満世界に評判せらるゝは、国光《こっこう》上の一大汚点、日本国民として断じて忍ぶを得ず。之を矯正する一日を遅くすれば則ち一日の恥を永うす可し。世人の改新を促して自から謹ましめ以て国の体面を清潔にするは、何は扨置き目下の緊急事なりとて、いよ/\宿論発表の時機到来を認め、昨年八月中より遽に筆を執り、僅々三十日足らずの間に稿を脱したる次第なりと言う。左れば女大学評論及び新女大学の二篇は、先生先天の思想に発して腹稿は既に幾十年前に成りたるに拘わらず、之を公にするの機会を得ざりしものが、時勢の進歩とや言わん、人心の変化とや言わん、一方に新民法の発布は先生をして恰も有力なる味方を得たるの思いあらしめ、又内地雑居の切迫はいよ/\其蓄蘊を発するの必要を感ぜしめて、爰に始めて此論を公
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