《おとろ》うる程の次第なれば、父たる者は其苦労を分ち、仮令《たと》い戸外の業務あるも事情の許す限りは時を偸《ぬす》んで小児の養育に助力し、暫くにても妻を休息せしむ可し。世間或は人目を憚《はばか》りて態と妻を顧みず、又或は内実これを顧みても表面に疏外《そがい》の風を装《よそお》う者あり。たわいもなき挙動なり。夫が妻の辛苦を余処《よそ》に見て安閑《あんかん》たるこそ人倫の罪にして恥ず可きのみならず、其表面を装うが如きは勇気なき痴漢《バカモノ》と言う可し。
一 女子少しく成長すれば男子に等しく体育を専一《せんいつ》とし、怪我せぬ限りは荒き事をも許して遊戯せしむ可し。娘の子なるゆえにとて自宅に居ても衣裳に心を用い、衣裳の美なるが故に其破れ汚れんことを恐れ、自然に運動を節して自然に身体の発育を妨ぐるの弊《へい》あり。大なる心得違なり。小児遊戯の年齢には粗衣粗服、破れても汚れても苦しからぬものを着せて、唯活溌の運動を祈る可し。又食物も気を付けて無害なる滋養品を与うるは言うまでもなきことながら、食物一方に依頼して子供を育てんとするは是亦《これまた》心得違なり。如何に食物を良くするも、其食物に相応する
前へ
次へ
全39ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福沢 諭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング