]、ニシメ[#「ニシメ」に白丸傍点]と記したるを見ず。今このめし[#「めし」に白丸傍点]の字は俗なるゆえメシ[#「メシ」に白丸傍点]と改むべしなど国中に諭告《ゆこく》するも、決して人力の及ぶべき所に非ず。
 さればここに小学の生徒ありて、入学の後一、二カ月をすぎ、当人の病気か、親の病気か、または家の世帯《せたい》の差支《さしつかえ》をもって、廃学することあらん。その廃学のときに、これまで学び得たるものを調べて、片仮名を覚えたると平仮名を覚えたると、いずれか生涯の利益たるべきや。平仮名なれば、ごくごく低き所にて、めしやの看板を見分くる便《たより》にもなるべきことなれども、片仮名にてはほとんど民間にその用なしというも可なり。これらの便・不便を考うれば、小学の初学第一歩には、平仮名の必要なること、疑《うたがい》をいるべからざるなり。
 また、片仮名にもせよ、平仮名にもせよ、いろは四十七文字を知れば、これを組合せて日用の便を達するのみならず、いろはの順序は一二三の順序の代りに用い、またはこれに交《まじ》え用うること多し。たとえば、大工が普請《ふしん》するとき、柱の順番を附くるに、梁間《はりま》
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