に小学の生徒は必ず中途にて廃学すること多き者と認めざるをえず。すでに廃学に決してとどむべからざる者なれば、たとい廃学するも、その廃学の日までに学び得たることをもって、なおその者の生涯の利益となすべき工夫なかるべからず。今日学務においてもっとも大切なることなれば、いささか余が所見を述《のぶ》ること左の如し。各地方小学教師のために備考の一助ともならば幸甚《こうじん》のみ。
小学教育の事 二
平仮名と片仮名とを較《くら》べて、市在《しざい》民間の日用にいずれか普通なりやと尋《たずぬ》れば、平仮名なりと答えざるをえず。男女の手紙に片仮名を用いず。手形《てがた》、証文、受取書にこれを用いず。百人一首はもとより、草双紙《くさぞうし》その他、民間の読本《よみほん》には全く字を用いずして平仮名のみのものもあり。また、在町《ざいまち》の表通りを見ても、店の看板、提灯《ちょうちん》、行灯《あんどん》等の印《しるし》にも、絶えて片仮名を用いず。日本国中の立場《たてば》・居酒屋に、めし[#「めし」に白丸傍点]、にしめ[#「にしめ」に白丸傍点]と障子に記したるはあれども、メシ[#「メシ」に白丸傍点
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