大いに読書の力を増すべし。
右の如く三ヶ月と六ヶ月と、また六ヶ月にて一年三月なり。決してこの間に成学《せいがく》するというにはあらず。もちろん人々《にんにん》の才・不才もあれども、おおよそこれまで中等の人物を経験したるところを記せしものなり。独見《どくけん》もでき、翻訳もでき、教授もでき、次第に学問の上達するにしたがい、次第に学問は六《む》ッかしくなるものにて、真に成学したる者とては、慶応義塾中一人もなし。恐らくば、日本国中にも洋学すでに成れりという人物はあるまじく、ただ深浅の別あるのみ。
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一、学費は物価の高下によりて定め難し。されどもまず米の相場を一両に一|斗《と》と見込み、この割合にすれば、たとい塾中におるも外に旅宿するも、一ヶ月金六両にて、月俸、月金、結髪、入湯、筆紙の料、洗濯の賃までも払うて不自由なかるべし。ただし飲酒は一大悪事、士君子たる者の禁ずべきものなれば、その入費を用意せざるはもちろんなれども、魚肉を喰らわざれば、人身滋養の趣旨にもとり、生涯の患《うれい》をのこすことあるゆえ、おりおりは魚類獣肉を
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