に関すべきに非ず。あるいは学者文人に諮問の要もあらば、その時にしたがいてこれに問うこと、はなはだ易し。国の大計より算すれば、年金の法、決して不経済ならざるなり。
帝室より私学校を保護し、学者を優待するは、学問の進歩を助くるのみならず、我が国政治上に関しても大なる便益を呈することならん。そもそも文字の意味を広くしていえば、政治もまた学問中の一課にして、政治家は必ず学者より出で、学校は政談家を生ずるの田圃《でんぽ》なれども、学校の業成るの日において、その成業《せいぎょう》の人物が社会の人事にあたるに及びては、おのおのその赴くところを異にせざるをえず。工たり、商たり、また政治家たり。あるいは学成るもなお学問を去らず、畢生《ひっせい》を委ねて学理の研究または教育の事を勉むる者あり。すなわち純然たる学者なり。
されば、工商または政治家は、その所得の学問を人間の実業に利用する者にして、学者は生涯学問をもって業となす者なり。前にもいえる如く、政治の国のために大切なるは、学問の大切なるに異ならず。政治学、日《ひび》に進歩せざるべからず。国民全体に政治の思想なかるべからず。政談熱心せざるべからず。政
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