ともに全国の便利を謀《はか》るものなれば、敵にあらず真の益友なり。かつこの私立の人物なる者、法を犯すことあらばこれを罰して可なり、毫《ごう》も恐るるに足らず」
四にいわく、「私立せんと欲する人物あるも、官途を離るれば他に活計の道なし」と。答えていわく、「この言は士君子の言うべきにあらず。すでにみずから学者と唱えて天下の事を患うる者、豈《あに》無芸の人物あらんや。芸をもって口を糊《こ》するは難きにあらず。かつ官にありて公務を司《つかさど》るも私にいて業を営むも、その難易、異なるの理なし。もし官の事務|易《やす》くしてその利益私の営業よりも多きことあらば、すなわちその利益は働きの実に過ぎたるものと言うべし。実に過ぐるの利を貪《むさぼ》るは君子のなさざるところなり。無芸無能、僥倖《ぎょうこう》によりて官途につき、みだりに給料を貪りて奢侈《しゃし》の資となし、戯れに天下のことを談ずる者はわが輩の友にあらず」
[#改段]
五編
『学問のすすめ』はもと民間の読本または小学の教授本に供えたるものなれば、初編より二編三編までも勉《つと》めて俗語を用い文章を読みやすくするを趣意となしたり
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