ず、その弁論すでに本文に明らかなり。かつ政府にて事をなすはすでに数年の実験あれどもいまだその奏功を見ず、あるいは私の事もはたしてその功を期し難しといえども、議論上において明らかに見込みあればこれを試みざるべからず。いまだ試みずしてまずその成否を疑う者はこれを勇者と言うべからず」
二にいわく、「政府、人に乏し、有力の人物、政府を離れなば官務に差しつかえあるべし」と。答えていわく、けっして然《しか》らず、今の政府は官員の多きを患《うれ》うるなり。事を簡にして官員を減ずれば、その事務はよく整理してその人員は世間の用をなすべし、一挙して両得なり。ことさらに政府の事務を多端にし、有用の人を取りて無用の事をなさしむるは策の拙なるものと言うべし。かつこの人物政府を離るるも去りて外国に行くにあらず、日本に居て日本の事をなすのみ、なんぞ患《うれ》うるに足らん」
三にいわく、「政府のほかに私立の人物、集まることあらば、おのずから政府のごとくなりて、本政府の権を落とすに至らん」と。答えていわく、「この説は小人の説なり。私立の人も在官の人も等しく日本人なり。ただ地位を異にして事をなすのみ。その実は相助けて
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