ところを明らかにし、上下固有の気風もしだいに消滅して、はじめて真の日本国民を生じ、政府の玩具たらずして政府の刺衝となり、学術以下三者もおのずからその所有に帰して、国民の力と政府の力と互いに相平均し、もって全国の独立を維持すべきなり。
以上論ずるところを概すれば、今の世の学者、この国の独立を助けなさんとするに当たりて、政府の範囲に入り官にありて事をなすと、その範囲を脱して私立するとの利害得失を述べ、本論は私立に左袒したるものなり。すべて世の事物をくわしく論ずれば、利あらざるものは必ず害あり、得あらざるものは必ず失あり、利害得失相半ばするものはあるべからず。わが輩もとよりためにするところありて私立を主張するにあらず、ただ平生の所見を証してこれを論じたるのみ。世人もし確証を掲げてこの論説を排し明らかに私立の不利を述ぶる者あらば、余輩は悦んでこれに従い、天下の害をなすことなかるべし。
付録
本論につき二、三の問答あり、よってこれを巻末に記す。
その一にいわく、「事をなすは有力なる政府によるの便利に若《し》かず」と。答えていわく、「文明を進むるはひとり政府の力のみに依頼すべから
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