独立を維持するは、ひとり政府の能《よ》くするところにあらず。また今の洋学者流も依頼するに足らず、必ずわが輩の任ずるところにして、まずわれより事の端を開き、愚民の先をなすのみならず、またかの洋学者流のために先駆してその向かうところを示さざるべからず。今わが輩の身分を考うるに、その学識もとより浅劣なりといえども、洋学に志すこと日すでに久しく、この国にありては中人以上の地位にある者なり。輓近《ばんきん》世の改革も、もしわが輩の主として始めしことにあらざれば暗にこれを助けなしたるものなり。あるいは助成の力なきもその改革はわが輩の悦ぶところなれば、世の人もまたわが輩を目するに改革家流の名をもってすること必せり。すでに改革家の名ありて、またその身は中人以上の地位にあり、世人あるいはわが輩の所業をもって標的となす者あるべし。しからばすなわち今、人に先だって事をなすはまさにこれをわが輩の任と言うべきなり。
そもそも事をなすに、これを命ずるはこれを諭《さと》すに若《し》かず、これを諭すはわれよりその実の例を示すに若かず。然りしこうして政府はただ命ずるの権あるのみ、これを諭して実の例を示すは私の事なれば
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