年頭の祝儀、菩提所《ぼだいしょ》の参詣《さんけい》、一人も欠席あることなし。その口吻《こうふん》にいわく、「貧は士の常、尽忠報国」またいわく、「その食を食《は》む者はその事に死す」などと、たいそうらしく言い触らし、すはといわば今にも討死《うちじに》せん勢いにて、ひととおりの者はこれに欺かるべき有様なれども、竊《ひそか》に一方より窺えば、はたして例の偽君子なり。
大名の家来によき役儀を勤むる者あれば、その家に銭のできるは何ゆえぞ。定まりたる家禄と定まりたる役料にて一銭の余財も入るべき理なし。しかるに出入《しゅつにゅう》差引きして余りあるははなはだ怪しむべし。いわゆる役得にもせよ、賄賂《わいろ》にもせよ、旦那の物をせしめたるに相違はあらず。そのもっともいちじるしきものを挙げて言えば、普請奉行が大工に割前《わりまえ》を促《うなが》し、会計の役人が出入りの町人より付け届けを取るがごときは、三百諸侯の家にほとんど定式《じょうしき》の法のごとし。旦那のためには御馬前に討死さえせんと言いし忠臣義士が、その買物の棒先《ぼうさき》を切るとはあまり不都合ならずや。金箔付きの偽君子と言うべし。
あるいは
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