、瞽者《こしゃ》に異ならず。
[#ここで字下げ終わり]
第六、歴史
[#ここから1字下げ]
 歴史は、和漢に限らず、世界中いずれの国にても歴代あらざるはなし。歴代あれば歴史もあるはずなり。ひろく万国の歴史を読み、治乱興廃の事跡を明らかにし、此彼《しひ》相比較せざれば、一方に偏するの弊を生じ、事にあたりて所置を錯《あやま》ること多し。他人の常言も我耳に新しく、恐るべきを恐れず、悦《よろこ》ぶべきを悦ばず、風声|鶴唳《かくれい》を聞きて走るの笑をとることあり。かくの如きはすなわち耳なきに若《し》かず。ゆえに万国の歴史を読まざるものは、聾者《ろうしゃ》に劣る。
[#ここで字下げ終わり]
第七、脩心学
[#ここから1字下げ]
 人は万物の霊なり。性の善なる、もとより論をまたず。脩心学とはこの理に基き、是非曲直を分ち、礼義廉節を重んじ、これを外にすれば政府と人民との関係、これを内にすれば親子夫婦の道、一々その分限を定め、その職分を立て、天理にしたがいて人間に交わるの道を明らかにする学問にて、ひっきょう霊心の議論なり。霊心の位するところは人体の頭脳にあり。然らばすなわち人として脩心の学を勤めざる者
前へ 次へ
全16ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
福沢 諭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング