家庭習慣の教えを論ず
福沢諭吉
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)豕《ぶた》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)機嫌|悪《あ》しければ
−−
人間の腹より生まれ出でたるものは、犬にもあらずまた豕《ぶた》にもあらず、取りも直さず人間なり。いやしくも人間と名の附く動物なれば、犬豕《けんし》等の畜類とは自《おの》ずから区別なかるべからず。世人が毎度いう通りに、まさしく人は万物の霊にして、生まれ落ちし始めより、種類も違い、階級にも斯《か》くまで区別のあることなれば、その仕事にもまた区別なかるべからず。人に恵まれたる物を食らいて腹を太くし、あるいは駆けまわり、あるいは噛《か》み合いて疲るれば乃《すなわ》ち眠る。これ犬豕が世を渡るの有様にして、いかにも簡易なりというべし。されども人間が世に居て務むべきの仕事は、斯《か》く簡易なるものにあらず、随分数多くして入り込みたるものなり。
大略これを区別すれば、第一に一身を大切にして健康を保つこと。第二に活計の道、渡世の法を求めて衣食住に不自由なく生涯を安全に送ること。第三に子供を養育して一人前の男女とな
次へ
全7ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福沢 諭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング