し、二代目の世の中にては、その子の父母となるに差支《さしつかえ》なきように仕込むことなり。第四に人々相集まりて一国一社会を成し、互いに公利を謀《はか》り共益を起こし、力の及ぶだけを尽してその社会の安全幸福を求むること。この四ヶ条の仕事をよくして十分に快楽を覚ゆるは論を俟《ま》たずといえども、今また別に求むべきの快楽あり。その快楽とは何ぞや。月見なり、花見なり、音楽舞踏なり、そのほか総て世の中の妨げとならざる娯《たの》しみ事は、いずれも皆心身の活力を引立つるために甚だ緊要のものなれば、仕事の暇《いとま》あらば折を以て求むべきことなり。これを第五の仕事とすべし。
右の五ヶ条は、いやしくも人間と名の附く動物にして社会の一部分を務むるものは、必ずともに行うべき仕事なり。この仕事をさえ充分に成し得れば、人間社会の一人たるに恥ずることなかるべし。然《しか》りといえども今の文明の有様にては、充分を希望するはとても六《むつ》ヶしきことなれば、必ずしも充分にあらずとも、なるべきだけ充分に近づくことの出来るよう、精々《せいぜい》注意せざるべからず。余輩が毎《つね》に勧むる所の教育とは、即ちこの有様に近づ
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