昇降場《プラットフォーム》
広津柳浪

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)昇降場《プラットフォーム》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)其|赤《あか》さんを

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
[#地より2字上がり](一九〇五年)
−−

   上

 仙台の師団に居らしッた西田若子さんの御兄《おあに》いさんが、今度戦地へ行らッしゃるので、新宿の停車場を御通過《おとお》りなさるから、私も若子さんと御同伴《ごいっしょ》に御見送《みおくり》に行って見ました。
 寒い寒い朝、耳朶が千断《ちぎ》れそうで、靴の裏が路上《じべた》に凍着くのでした。此寒い寒い朝だのに、停車場はもう一杯の人でした。こんな多勢の人達が悉皆《みんな》出征なさる方に縁故のある人、別離《わかれ》を惜しみに此処に集ってお居でなさるのかと思ったら、私は胸が一杯になりましたの。
『若子さん、中へは這入れそうもないことよ。』
 各箇《いくつ》かの団体の、いろいろの彩布の大旗小旗の、それが朝風に飜って居る勇しさに、凝乎《じっ》と見恍《みと》れてお居でなさった若
次へ
全12ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
広津 柳浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング