まア」
小万は驚きながらふッ[#「ふッ」に傍点]と気がつき、先刻《さきほど》吉里が置いて行ッた手紙の紙包みを、まだしまわず床の間に上げておいたのを、包みを開け捻紙《こより》を解いて見ると、手紙と手紙との間から紙に包んだ写真が出た。その包み紙に字が書いてあった。もしやと披《ひろ》げて読み下して、小万は驚いて蒼白《まッさお》になッた。
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一筆書き残しまいらせ候《そろ》。よんどころなく覚悟を極《きわ》め申し候。不便《ふびん》と御推《ごすい》もじ願い上げまいらせ候。平田さんに済み申さず候。西宮さんにも済み申さず候。お前さまにも済みませぬ。されど私こと誠の心は写真にて御推もじ下されたくくれぐれもねんじ上げまいらせ候。平田さんにも西宮さんにも今一度御目にかかりたく、これのみ心残りにおわし候。いずかたさまへも、お前さまよりよろしくお伝え下されたく候。取り急ぎ何も何も申し残しまいらせ候。
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[#地から2字上げ]さとより
おまん様
人々
写真を見ると、平田と吉里のを表と表と合わせて、裏には心という字を大きく書き、捻紙《こより》にて十
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