いそうだよ。西宮さんが出した手紙の返事も来ないそうだよ。だがね、人の行末というものは、実に予知《わか》らないものだねえ」と、小万がじッと吉里を見つめた眼には、少しは冷笑を含んでいるようであッた。
「まアそんなもんさねえ」と、吉里は軽《かろ》く受け、「小万さん、私しゃお前さんに頼みたいことがあるんだよ」
「頼みたいことッて」
吉里は懐中《ふところ》から手紙を十四五本包んだ紙包みを取り出し、それを小万の前に置いた。
「この手紙なんだがね。平田さんから私んとこへ来た手紙の中で、反故《ほご》にしちゃ、あんまり義理が悪いと思うのだけ、昨夜《ゆうべ》調べて別にしておいたんだよ。もうしまっておいたって仕様がないし、残しときゃ手拭紙《てふきがみ》にでもするんだが、それもあんまり義理が悪いようだし、お前さんに預けておくから、西宮さんに頼んで、ついでの時平田さんへ届けてもらっておくんなさいよ。ねえ小万さん、お頼み申しますよ」
小万は顔色を変え、「吉里さん、お前さん本気でお言いなのかえ」
「西宮さんへ話して、平田さんへ届けるようにしておくんなさいよ」と、吉里は同じことを繰り返した。
「吉里さん、どうして
前へ
次へ
全86ページ中81ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
広津 柳浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング