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返へらざる世を悲しめば如月の磯辺の雪も度《ど》を超えて降る
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 早春大磯に滞在中、雪の余り降らない暖かい大磯には珍しい大雪が偶※[#二の字点、1−2−22]降り出した。返らない世を悲しむ私の心を知つてか知らずにか、この雪の降り方は尋常ではない。度を越した悲哀を形にして私に見せてくれる様でもある。そんな心であらう。この大磯滞在中の作には面白いのが多いから二三挙げよう。丁度節分だつたのでこんな歌がある。 大磯の追儺《つゐな》の男豆打てば脇役がいふ「ごもつともなり」 その大雪の光景は又 海人《あま》の街雪過ちて尺積むと出でて云はざる女房も無し と抒述されてまるで眼前に見る様だ。その雪の上を烏が一羽飛んでゐた、それは直ちに昔故人と一しよに鎌倉で見た烏の大群と比べられ、 この磯の一つの烏百羽ほど君と見つるは鎌倉烏 となり、又東京から、東京は大吹雪ですが、そちらは如何ですかといふ電話が来たのを 東京の吹雪の報の至れども君が住む世の事にも非ず と軽く片付けたのなど何れもそれぞれ面白い。

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半身に薄紅《うすくれなゐ》の羅《うすもの》
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