でもある。絹屋は呉服屋、木屋は材木屋のことだらうと思ふが、或は商号かも知れない。兎に角堺の町の商家に違ひない。互に近所同志で、同じ年頃の娘があつて、何れも美しく大事にかしづかれてゐる。その二軒が夏が来たので戸を払つて簾をおろした。それが相談した様に同じ日でもあつたといふのである。何と珍しい趣向の歌ではないか。いくら褒めても褒め足りない様な気がする。その音楽的効果も亦すばらしい。
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提灯《ちやうちん》に蛍を満し湯に通ふ山少女をば星の見に出づ
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天城の山口の嵯峨沢の湯に遊んだ時の作。蛍の多い所と見え、土地の娘が提灯に蛍を一杯入れそれを明りにして湯に通ふ光景にぱつたり出合つた作者は感心して呆然と見送つた。空には初秋の星が降る様に光つてゐる。上からこの珍景を見て居るのだらう。
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舞の手を師の褒たりと紺暖簾入りて母見し日も忘れめや
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少女時代の思ひ出が多数歌はれてゐるその中の一つ。源氏や西鶴に読み耽る以前にこんなあどけない時代もあつたのであらう。しかし遊芸の如きは幾許もなく抛棄せられ独り文学少
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