易ならぬ異変であつた。しかし当時は幸に晶子さんといふ詩人がゐて歌に之を不朽化してくれたので文化史上の一齣を為し得た。然るに今囘の戦禍は如何であらう。その数倍数十倍に上る災禍も一詩人の詩に作つて之を弔つたものあるを聞かない。情ないことになつたものである。
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大正の十二年秋帝王の都と共に我れ亡びゆく
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これなどは昭和二十年春浅くとでもした方がどれ程適切か分らない。それにしても晶子さんはよい時に死んだものである。
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天地|崩《く》ゆ命を惜む心だに今暫しにて忘れ果つべし
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命を惜む心は人間最後の心であつて、それより先にものはない。その最後の心をも忘れる許りに恐ろしかつたのである。あの繊細な感覚の持主にして見れば無理はない。
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空にのみ規律残りて日の沈み廃墟の上に月昇りきぬ
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二十五年も前の事だが九月二日三日とまだ烟の立ち昇る焼跡に昇つた満月の色を私は忘れない。日は沈み月は昇るがそれは空の事、人間世界は余震と流言と夕立とでごつた返してゐたので
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