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秋風は長き廊ある石の家吾が為めに建つ目には見えねど
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 作者は巴里滞在中、油絵の手ほどきを受け、帰朝後も暫く写生を続け、素人としては雅致なしとしない幾枚かを作り富士見町の壁に懸けてゐたことがある。それも作者が造形芸術家としてその資格を欠かない一証ではあるが、この歌などは作者の造形芸術家としての面目を明瞭に表してゐる。或は音楽として或は美術として自由自在に自己を表現して余す所のなかつた作者は珍重されなければならない。

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信濃川鴎もとより侮らず千里の羽を繕ひて飛ぶ
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 大正十三年八月新潟での作。日本第一の信濃川の河口を鴎が飛んでゐる。千里の海を飛ぶ鴎ではあるが大きくとも尚狭い、信濃川を侮るけしきなく、羽づくろひをして力一杯に飛んで居る。これは同時に象徴|歌《うた》であつて、どんなことにも全力を尽くして当る作者自身の心掛を鴎に見出したのである。

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天地に解けとも云はぬ謎置きて二人向へる年月なれや
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 夫婦生活の謎である。その謎は遂に解かれず
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