皷よしいみじく清き猩々が波の上をばゆらゆらと行く といふ歌があるので、その舞の猩々であることが分る。

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鴉ども落日の火が残したる炭の心地に身じろがぬかな
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 ここに又印象|歌《うた》の内でも最も濃淡のはつきりした一例が見られる。冬の落日の印象で、日が沈み終つても尚裸木に止つた儘動かない鵜を火の消えた火鉢の炭のやうに感じたのである。

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束の間も我を離れてあり得じと秋は侮る君の心も
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「君の心も」は「君の心をも我が心をも」の略であらう。倦怠の夏が過ぎ、快い秋ともなれば、恋の引力が急に増大して離れられなくなる。それを見る秋は人の心の弱さ頼りなさを侮らずには居られないであらう。

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寂しさを華奢の一つに人好み我は厭へど逃れえぬかな
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 この人は誰でもよい、古人でもよい、寛先生であつてもよい。兎に角日本人には寂しさを好むものが多い。私は華やかなことは好きだが、寂しさやしをりは大嫌ひだ。しかし人生の一面である以上それから逃れるわけにもゆかないのである。
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