かつたであらうし、又出来ることでもない。それを作者は敢て試みたわけで、之を読んで同感し得る人から見れば成功した作といへる。

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川上の峨峨の出湯に至ること思ひ断つべき秋風ぞ吹く
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 これは大正十三年九月陸前青根に遊んだ時の作。青根の奥深く、蔵王の麓でもあらうか峨々といふ恐ろしく熱い山の温泉のあることを聞いて少し心を動かしたが、車でなど行かれる所でもないので問題にはならなかつた。そこで罪を秋風に著せて思ひ止ることにしたのである。

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何時見てもいはけなき日の妹の顔のみ作る紅椿かな
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 作者はあらゆる花を愛し、あらゆる花を歌つてゐるが、椿も亦その最も好むものの一つであつて歌も多い。蓋しこんな所にもその所因があつたのかも知れない。この歌では何時見てもといふ句が字眼である。特殊の場合に恐らく誰にでも経験のあるらしい事だが唯気がつかないのだと思ふ。それを作者がこの椿の花の場合について代つて云つてくれたのである。

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夕暮に弱く寂しく予め夜寒を歎く山の蟋蟀
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