この歌では「予め夜寒を」が字眼で之が無ければ歌にはならない。(世間ではこの歌から予めを抜いたやうな歌を作つて歌と思つてゐるらしいが、いらぬ時間つぶしである。)初秋とはいへ山の上では夜ふけは相当寒い。それを啼き初めの弱い声をきいて蟋蟀も夜寒を感じてゐると思ふのである。
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春の夜の月の光りに漂ひて流れも来よや我が思ふ人
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久しぶりで音楽|歌《うた》が出て来た。この歌などが日本文学中の一珠玉になつて若い人達の間に日常口誦されるやうな日が早く来ればよいと思ふ。蓋し日本抒情詩はそこから前進するであらうから。
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陸奥の白石川の洲に立ちて頼りなげなる一むら芒
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青根から降り来て白石川の川添ひに暫く車を走らせた時見た川の洲の芒である。当時のあくまでもさびれてゐた東北の姿がそこにもあらはれてゐるやうで頼りなげに見えたのである。
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別れつる鼠の色の外套がおほへる空の心地こそすれ
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今し方男に別れて来た女の心をその上にある曇り空で象徴しようとした試
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