の頃は多少の余裕も生じたので、人生の明るい面を見たい心持が動いてゐたやうで、それを抒した歌が残つてゐる。この歌はその一つで、他は 人の世を楽しむことに我が力少し足らずと歎かるゝかな いみじかる所なれども我にのみ憂しと分ちて世を見ずもがな の二つである。楽しみたいが力が足りない、私にのみ辛かつたといふ風に分けたくない、人の世をよそから見ると、如何しても楽しんで生きてゆくべき所としか見えない、それが出来ないのは力が足りないからだと思ひ又いい所なのだが私に限つて、辛いのだと初めから分けて考へることを止めたらどうだらうなどと思ひ悩むのであつて、これは連作として三首併せて読まねば意味が完結しないわけだ。

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自らの心乱してある時の息のやうなる雪の音かな
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 雪の音は雨の音と異つて、聞こえるやうでもあり聞こえない[#「やうでもあり聞こえない」は底本では「やうでもあ聞こえりない」]様でもあり、淋しい様な暖かい様なあいまいなものであるが、作者はそれを心の乱れた若い女の息のやうに感じたのである。雪の音を外界から切り離して抽象的に詠むことは作者以前には蓋し無
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