何れも零れる程度だと省筆を用ゐて霧を抒した歌である。

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君に文書かんと借りしみ吉野の竹林院の大硯かな
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 竹林院に泊つた人の話によると大硯があるさうだといつであつたか何かの話の序に誰かそんなことを云ひ出して大笑ひをした事があつた。この歌は蓋し調子がいいからであらう、それ程即ち「大硯」が供へつけられる程有名な歌であつた。今読んで見ても実に調子がよい。名調子とでも云ひたい位だ。

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もろもろの落葉を追ひて桐走しる市川流の「暫」のごと
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 落葉の歌は世間にも随分多いし、この作者も実に沢山作つてゐる。しかしこの「暫」の様なのは二つとない。その見立ての凄さ、地下の団十郎も舌を巻くであらう。

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はかなごと七つ許りも重なれば離れ難かり朝の小床も
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 つまらない頼りにもならない様なことでもそれが七つも重ると自ら意味も生じ頼もしさも出て来てはかないながらそれらしい形が具つて来る。そんなわけもないまぼろしを追ふ許りにつひ朝の床も離れにくくなる。しかし幾ら重つて
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