は説明も要領を得ないが象徴詩は仕方がない。

[#ここから2字下げ]
駅二つ裾野の汽車は越えつれど山の蛍は飛ぶを急がず
[#ここで字下げ終わり]

 妙高山腹の赤倉温泉での作。今しがた田口を出た遠い汽車の灯が見て居るうちに裾野を廻つて二本木に着き、そこをも越えて大急ぎで山を走り下りてゆく。その間同じ小さい灯ながらこの辺を飛ぶ山の蛍はどうかといへば、何の目的もなくふわりふわり飛んでゐる許りで、汽車の灯などどうあらうと見向きもしない。僅に二種の小さい灯を比較するだけで越後平野を見渡す妙高の夜景をぼんやりではあるが描出してゐる。

[#ここから2字下げ]
男にて鉢叩きにもならましを憂しともかこち恨めしと云ふ
[#ここで字下げ終わり]

 どうですこの頃の私のこぼし方、朝から晩まで不平許り、辛いと云つたり恨めしいと云つたり、誰の為にこんな苦労をするのだらう。もし私が男だつたら、私はいつそ鉢叩きにでもなりますよ、さうしてお念仏を申しながら瓢箪を叩いて廻りますよ、その方がどれほど苦労が少いでせう。

[#ここから2字下げ]
薬師山霧に化《かは》りて我が岸の板屋楓が薬師に化る
[#ここで字下げ終わり
前へ 次へ
全349ページ中162ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
平野 万里 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング