へかけては昔の武蔵野の俤が残つてゐて野馬でも遊んでゐさうな心持がしてゐた。そこで外の時ならよいが、御産のすまないうちにそんな闖入者があつては困るので白菊を植ゑて柵にしたのです。さて闖の字を書いて見るとここにも野馬の遊びにくる趣きが出てゐてをかしい。

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御堂より高かる空に五山浮き松風の鳴る広業寺かな
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 明治の画家寺崎廣業氏の山荘を禅寺にしたらしく信州渋の上林にある。小さくとも寺であるから主家《おもや》を御堂と呼び、その上の空に山々の聳えてゐるのを禅宗寺院に因んで五山と呼び、松風を添へて山寺の風致を引き出すわけである。

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撥に似るもの胸に来て掻き叩き掻き乱すこそ苦しかりけれ
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 掻き叩きといふから丁度長唄の撥の気持であらう、さういふものが来て胸を叩くので感情は忽ち混乱してしまふ、その苦しさといつたら無い。そんなことが往々あつたが、今また丁度来て私の胸を掻きむしつてゐる最中だ。その正体は何物か、それは分らない。しかし撥のやうなものらしい。苦しいが打ち払ふ術もなく叩くに任せてゐるのである。之で
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