たこともなし、そんな話も聞かないが、琴の歌は相当多いから習はれたのではあらう。
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源氏をば一人となりて後に書く紫女年若く我は然らず
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紫式部が源氏を書き出したのは夫に死に別れた後であるが、その年は若かつた。私も今一人になつたが、既に六十になる。大変な違ひだ。何が書けようか。といふのであるが、しかし作者は既にこの時には源氏の新々訳に着手して居たのではなかつたらうか。
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雨の日の石崩道《いしくえみち》に聞きしよりけものと思ふ山ほととぎす
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雨中赤城登山の記念の一つであらう。負へる石かと子を迷ひといつたあの大雨の中で、石の崩れ落ちる山路で聞いたほととぎすは何としても猿のやうな形のけものの声としか思はれなかつた。その記憶があるので今でもほととぎすを聞くとそんな気がする。
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移り住む寂しとしたる武蔵野に一人ある日となりにけるかな
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作者の設計に成る荻窪の家が落成して移られた当時の歌に 身の弱く心も弱し何しかも都の内を離れ来にけん 恋しなど思は
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