降りて、序に店へ入つて汽車中の料にする積りか何かの白粉を買つたのであらう。それを見て嘗ては私もこんなこともしたのだと往時を囘顧したわけである。この歌の面白さは、しかし、買ふものが白粉である所に存するので、さういふことは優れた作者だけが弁へてゐる。
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ませばこそ生きたるものは幸ひと心めでたく今日もありけれ
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生の喜びまたは生命の幸福感を詠出したものであらうが、そののんびりした調子に何となく源氏の君を迎へる紫の上のやうな心持が感ぜられないでもない。
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山山が顔そむけたる心地すれ無残に見ゆる己れなるべし
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山を見るに、けふは如何したことか、どの山にも皆顔を背けたやうな形が見える。私の姿がけふは特にみじめに見える為、見るに忍びないのであらう。一種のモノロオグで、わが衰へを自ら怪しむ心の影が山に映じ山をして顔をそむけしむるのである。
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椿散る島の少女の水汲場信天翁は嬲られて居ぬ
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伊豆の大島の様なのどかな風光を描出する歌。椿と、少女と、水の少
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