かには何があるのか。救ひか? 救ひはないのか救ひはないのかと僕は僕に回転してゐるのか。回転して押されてゐるのか。それが僕の救ひか。違ふ。絶対に違ふ。僕は僕にきつぱりと今云ふ。僕は僕に飛びついても云ふ。
……救ひはない。
僕は突離された人間だ。還るところを失つた人間だ。突離された人間に救ひはない。還るところを失つた人間に救ひはない。
では、僕はこれで全部終つたのか。僕のなかにはもう何もないのか。僕は回転しなくてもいいのか。僕は存在しなくてもいいのか。違ふ。それも違ふ。僕は僕に飛びついても云ふ。
……僕にはある。
僕にはある。僕にはある。僕にはまだ嘆きがあるのだ。僕にはある。僕にはある。僕には一つの嘆きがある。僕にはある。僕にはある。僕には無数の嘆きがある。
一つの嘆きは無数の嘆きと結びつく。無数の嘆きは一つの嘆きと鳴りひびく。僕は僕に鳴りひびく。鳴りひびく。鳴りひびく。嘆きは僕と結びつく。僕は結びつく。僕は無数と結びつく。鳴りひびく。無数の嘆きは鳴りひびく。鳴りひびく。一つの嘆きは鳴りひびく。鳴りひびく。一つの嘆きは無数のやうに。結びつく、一つの嘆きは無数のやうに。一つのやう
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