では、この凍てた地球の夜にとつて、何ほどの意味があるのだらう。だが、私はこの身の行衛を、己の眼でいま少し見とどけたいのであつた。
 その後、私は東京の友人のところで間貸りして暮すやうになつたが、一年あまりすると、余儀ない事情でそこも立退かねばならなくなつた。宿なしの私は行くあてもなく、別の知人の下宿へ転がり込んだものの、身を落着ける部屋は見つからないのであつた。出来るだけ早く私はその知人のところも立退かねばならない。だが、行くあてはまるで見つからない。私の眼の前にはまた冬の夜の星の群が見えてくるのであつた。



底本:「日本の原爆文学1」ほるぷ出版
   1983(昭和58)年8月1日初版第一刷発行
初出:「饗宴」
   1948(昭和23)年6月号
入力:ジェラスガイ
校正:林 幸雄
2002年7月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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