秋日記
原民喜
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)衝立《ついたて》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)空|朧々《ろうろう》として
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)[#「左部はさんずい、中部は景、右部は頁」、第3水準1−87−32、30−7]
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緑色の衝立《ついたて》が病室の内部を塞《ふさ》いでいたが、入口の壁際《かべぎわ》にある手洗の鏡に映る姿で、妻はベッドに寝たまま、彼のやって来るのを知るのだった。一号室の扉のところまで来ると、奥にいる妻の気配や、そちらへ近づいて行こうとする微《かす》かに改まった気分を意識しながら、衝立をめぐって、ベッドのところへ彼がやって来ると、妻はいたずらっぽい微笑で彼を迎える。すると彼には一咋日ここを訪れた時からの隔りがたちまち消えてしまう。小さな卓の花瓶《かびん》にコスモスの花が、紅《あか》い小さなボンボンダリアと一緒に挿《さ》してあるのが眼に留ると、彼は一昨日は見なかったダリアの花に、ささや
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