ならずあるのです。
東京は盆で電車はもの凄いばかりです。それでは暑さの折から御大切に。
兄上様[#地から3字上げ]民喜
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●昭和二十一年十月十三日 大森区馬込末田方より 広島県佐伯郡平良村 原信嗣宛
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毎日よく雨が降つてじめじめした天気がつづいて居ます。廿日市の秋はどうですか。もう松茸も出る頃でせう。松茸どころかこちらは一ヶ月以上も米の味を忘れて居ます。最低生活をしながら金は矢鱈にかかり困つたものです。今年は豊作で増配の見込などと云はれてゐますが、ほんとか、どうか疑はしくなる程です。美樹君ももう来るかしらと思つて居ましたがなかなか出て来ませんね。
先日は小切手有難う御座いました。第一封鎖に受つけてくれました。特殊預金など今後どうなるのでせうか、財産税などの手続で御存知のことがあったらその都度御教へ下さいませんか。扨て話は別ですがヘンリー・クボ君は大阪へ転勤になりました。そのヘンリー君の紹介で増岡登三郎といふ伯父を知ることが出来ました。先日牛込の家へはじめて訪ねて行きました。七十二歳といふことですが、なか
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