1字下げ、折り返して2字下げ]
●昭和二十年九月十五日 広島県佐伯郡八幡村田尾方より 松戸市三丁目一〇〇三鴻巣方 永井善次郎宛
[#ここで字下げ終わり]
 高萩町といふのは地図で見ると海岸にあるやうですね。八幡村といふのは廿日市から一里あまり奥へはいつた寒村です。こないだから手紙を出しましたが届かなかつたことでせう。本郷にも思ひがけぬ不幸が訪れたものですね。
 広島の中心部で罹災した人は油断が出来ないらしいやうです。僕達も一ヶ月あまりを半病人のやうに勢なく暮して居ります。何せ食糧が足らないので無理もありません。
 また九月二十八日がやつて来ます。思へばあはただしい一年間でした。近いうちに本郷を訪れようと思つて居ります。それでは御元気で居て下さい。
[#地から3字上げ]九月十五日 原民喜
[#ここから3字下げ]
永井善次郎様
[#ここで字下げ終わり]



[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
●昭和二十年十月十二日 八幡村より 松戸市三丁目一〇〇三鴻巣方 永井善次郎宛
[#ここで字下げ終わり]
 九月三十日日附のハガキ今日受取りました。もしかすると君は本郷の方へ居るのではないかと
前へ 次へ
全38ページ中19ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング