構に存じます。今朝ほどズボンを有難うございました。お蔭でたすかります。麻のきれを持つてゐたので、白ズボンを拵へました。そして元の夏服のずぼんは半ずぼんになほし上衣は黒に染めました。これでどうやら夏の用意ができたと思つてゐると、太田咲太郎氏や水木京太氏が急に死にましたので、告別式の服に間にあひました。まづまづかつかつのところで身のまはりのものも間にあつてゆきます。御健勝を祈ります。
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●昭和二十四年七月十三日 神田神保町より 原美樹宛
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すつかり夏らしくなつた。僕は毎晩、南京虫に攻められてゐるので、昔の空襲警報の頃を思ひ出す。八月六日頃そちらへ行つてみたい気もするのだが、暑いし金はないし、旅行もこの節は汽車が危険だしやめにする。村岡は結婚したのかしら。
何だかんだとこの頃は、酒をよく飲むお蔭で貧乏してゐる。
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●昭和二十五年二月 東京都武蔵野市吉祥寺二四〇六より 広島市幟町 原信嗣宛
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御手紙有難うございました。
副報告書たしかに受取りま
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