夏の花
原民喜
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)請《こ》う
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三四人|横臥《おうが》していた。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「けものへん+章」、第3水準1−87−80]《のろ》の
−−
[#ここから9字下げ]
わが愛する者よ請《こ》う急ぎはしれ
香《かぐ》わしき山々の上にありて※[#「けものへん+章」、第3水準1−87−80]《のろ》の
ごとく小鹿のごとくあれ
[#ここで字下げ終わり]
私は街に出て花を買うと、妻の墓を訪れようと思った。ポケットには仏壇からとり出した線香が一束あった。八月十五日は妻にとって初盆《にいぼん》にあたるのだが、それまでこのふるさとの街が無事かどうかは疑わしかった。恰度《ちょうど》、休電日ではあったが、朝から花をもって街を歩いている男は、私のほかに見あたらなかった。その花は何という名称なのか知らないが、黄色の小瓣の可憐《かれん》な野趣を帯び、いかにも夏の花
次へ
全30ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング