フ国都の名はローブラルグラットといわれ、これは『世界の誇』という意味でした。主人は宮殿から程遠くない、目抜きの大通りに宿をとりました。そして、この私のことを、くわしく書いたビラを、あちこちに貼り出しました。それから、方三四百フィートもある、大きな部屋を借りて、そこに、私の舞台として、直径六十フィートばかりのテーブルを置きました。そして、私が落っこちないように、テーブルの縁から三フィート入ったところに、高さ、三フィートの柵をめぐらしました。
私は毎日、十回ずつ見世物にされましたが、人々はすっかり感心して、大満足のようでした。私はこの頃、もうかなりうまく言葉が使えて、話しかけられる言葉なら、何でもわかるようになっていました。そのうえ、家にいるときも、旅行中も、いつもグラムダルクリッチが私の先生になってくれたので、この国の文字もおぼえ、ちょっとした文章なら説明することができるようになりました。彼女はポケットに小さな本を入れていました。それは若い娘たちによく読まれる本で、宗教のことが簡単に書いてあります。その本を使って、彼女は私に字を教えたり、言葉を説明してくれるのでした。
3
前へ
次へ
全249ページ中100ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング