ィを入れて、その上に赤ん坊の寝台を置いてくれました。私の下着やシャツなんかも、みんな、彼女がとゝのえてくれ、何不自由なくしてくれました。私たちの後から、家の小僧が一人、荷物を持ってついて来ました。
 主人の考えでは、この旅は途中の町で見世物を開き、客のありそうな村や、貴人の家には、五十マイルや百マイルは、寄り道するつもりだったらしいのです。私たちは毎日わずかに百四五十マイルぐらいずつ進み、大へんらくな旅をしました。グラムダルクリッチが私を庇《かば》うために、馬の揺れですぐ自分の方が疲れてしまうと言ってくれたからです。私が頼むと、彼女はたび/\、箱から出しては、外の空気を吸わせてくれたり、景色を見せてくれました。そんなとき、彼女は紐でしっかり私を引っ張っていてくれるのでした。
 私たちはナイル河やガンジス河よりも、何倍も大きな河を、五つ六つ越したのです。ロンドンのテムズ河みたいな、小さな川は一つもないのです。この旅行は十週間かゝりました。私たちは十八の大都市に立ち寄り、それから村々や、貴人の家で、何十回となく、見世物になりました。
 十月二十六日に、いよ/\、私たちは国都に着きました。そ
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