ネ生物、身の丈はスプラクナク(この国の綺麗な動物)ほどもないのに、頭のてっぺんから足の先まで、身体は人間にそっくりそのまゝ、言葉が話せて面白い芸当をいたします。」
 と、こんなふうなことをしゃべらせたのです。
 私は宿屋で、三百フィート四方もありそうな、大広間につれて行かれ、テーブルの上に乗せられました。私の乳母は、テーブルのそばの腰掛の上に立って、私の面倒をみたり、いろ/\と指図をしてくれるのでした。そのうちに、見物人がぞろ/\と押しかけて来ましたが、あまり混雑するので、主人は一回に三十人だけ見せることに決めました。
 私は乳母の言いつけどおりに、テーブルの上を歩きまわったり、私にものを言わそうとして、彼女がいろ/\質問をすると、私は力一ぱいの声で、それに答えるのでした。それから、何度も見物人の方を振り向いて、ていねいにおじぎして、「よくいらっしゃいました。」と言ったり、そのほか、教わったとおりの挨拶をします。そしてグラムダルクリッチが、指貫《ゆびぬき》に酒を注いで渡してくれると、私はみんなのために乾盃をしてやります。かとおもえば、短剣を抜いて、イギリスの剣術使のまねをして、振りまわ
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