スも、このことは非難されるはずがないと思います。イギリスの国王でも、今の私と同じようなことになったら、やはり、これくらいの苦労はするだろう、と私は思いました。
主人は友達の意見にしたがって、私を箱に入れて、次の市日に隣りの町まで運んで行きました。私の可愛い乳母さん(娘)も、父親の後に乗って、一しょについて来ました。私の入れられた箱は、四方とも塞《ふさ》がれていて、たゞ、出入口の小さな戸口のほかには、空気抜きのため錐《きり》の穴が二つ三つつけてありました。娘は私が寝られるように、箱の中に赤ん坊の蒲団を敷いてくれました。
この箱の旅は、たった半時間の旅行でしたが、身体がひどく揺られたので、私はくた/\になってしまいました。なにしろ、馬は一歩に四十フィートも飛んで、しかも非常に高く跳ねるので、私の箱は、まるで大暴風雨の中を、船が上ったり下ったりするようなものでした。
さて、町に着くと、主人は、行きつけの宿屋の前で馬をおり、しばらく、宿の亭主と相談していました。それから、いろんな準備が出来上ると、東西屋をやとって、町中に触れ歩かしました。
「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい、世にも不思議
前へ
次へ
全249ページ中95ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング