黷ワした。私は血だらけの短剣を見せ、上衣の垂れで拭いて鞘におさめました。

     2 見世物にされた私

 この家には九つになる娘がいました。年のわりには、とても器用な子で、針仕事も上手だし、赤ん坊に着物を着せたりすることも、うまいものでした。この娘と母親の二人が相談して、赤ん坊の揺籃《ゆりかご》を私の寝床に作りなおしてくれました。私を入れる揺籃を箪笥《たんす》の小さな引出に入れ、鼠に食われないように、その引出をつるし[#「つるし」に傍点]棚の上に置いてくれました。私がこの家で暮している間は、いつもこれが私の寝床でした。もっとも、私がこの国の言葉がわかるようになり、ものが言えるようになると、私はいろ/\と頼んで、もっと便利な寝床になおしてもらいました。
 この家の娘は大へん器用で、私が一二度その前で洋服を脱いでみせると、すぐに私に着せたり脱がせたりすることができるようになりました。もっとも、娘に手伝ってもらわないときは、私は自分ひとりで、着たり脱いだりしていました。彼女は私にシャツを七枚と、それから下着などをこしらえてくれました。一番やわらかい布地でこしらえてくれたのですが、それで
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