フ国でなら、一艦隊をそっくり引きずって帰ることだってできたのです。
 だが、こゝでは、こんな、とてつもない、大きな連中に会っては、この私はまるで芥子粒《けしつぶ》みたいなものです。今に誰かこの大きな怪物の一人につかまったら、私は一口にパクリと食われてしまうでしょう。しかし、この世界の果てには、リリパットより、もっと小さな人間だっているかもしれないし、その世界の果てには、今こゝにいる大きな人間より、もっと/\大きな人間だっているかもしれないと、私は恐怖で気が遠くなっていながら、こんなことを思いつゞけていました。
 そのうちに、刈手の一人が、私の寝ている畝《うね》から、十ヤードのところまで、近づいて来ました。もう、この次には、足で踏みつぶされるか、鎌で真二つに切られるかもわかりません。その男が動きかけると、私は大声でわめきちらし、助けを求めました。
 巨人は立ちどまって、しばらく、あたりを見まわしていましたが、ふと、地面にひれふしている私を、見つけました。この小さな、危険な、動物を、騒がれないように、噛まれないように、つかまえるには、どうしたらいゝのかしら、といった顔つきで、彼はしばらく考
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