ヲていました。私もイギリスで、いたち[#「いたち」に傍点]や鼠をつかまえるときには、ちょっとこんなふうにしたものです。
 とう/\、彼は思いきって、人差指と親指で、私の腰の後の方をつまみあげると、私の形をもっとよく見るために、目から三ヤードのところへ、持ってゆきました。私は、彼のしていることがよくわかったので、安心して落ち着いていました。こうして、地上から六十フィートの高さにつまみ上げられている間は、じっとしていよう、と思いました。ただ、苦しかったのは、私を指からすべり落すまいとして、ひどく、脇腹をしめつけられていることでした。
 私はたゞ、天を仰ぎ両手を合せながら、お願いするように、哀れっぽい調子で、何かと言ってみました。というのは、私たちが厭な虫など殺す場合、よく地面にパッとたゝきつけるものですが、あれを今やられはすまいかと、心配でならなかったのです。
 だが、幸いなことに、彼には私の声や身振りが気に入ったようでした。私がはっきり言葉を話すので、その意味は彼にはわからなかったのですが、ホウ、ものが言えるのか、と驚いたような顔つきで、彼は珍しげに私を眺めるのでした。私は、彼の指で、脇
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