蜷bのフリムナップもこの席に一しょに来ていましたが、どういうものか、彼はとき/″\、私の方を見ては、苦い顔をします。しかし私は、そんなことは気にしないで、ひとつみんなを驚かしてやれと思って、思いきりたくさん食べてやりました。これはあとで気づいたのですが、大蔵大臣は、かねてから私に反感を持っていたので、この会食のあとで陛下に言ったらしいのです。
「あんなものを陛下が養っておられては、お金がかゝって大へんです。できるだけ早く、いゝ折を見て、追放なさった方が、国家の利益でございましょう。」
 と、こんなことを言ったものとみえます。

     6 ハイ さようなら

 私はこの国を去るようになったのですが、それを述べる前に、まず、二ヵ月前から、私をねらっていた陰謀のことを語ります。
 私がちょうどブレフスキュ皇帝を訪ねようと、準備しているときのことでした。ある晩、宮廷の、ある大官がやって来ました。(この大官が、以前、皇帝の機嫌を損じたとき、私は彼のために大いに骨折ってやったことがあるのです)彼は車で、こっそり、私の家を訪ねて来たのです。
 ぜひ、内証でお話ししたいことがあると言うので、従者た
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