キっかり満足し、私に驚いたようです。そこで、私は彼等にこう言っておきました。
「あなた方がお国へ帰られたら、陛下によろしくお伝えください。陛下のほまれは、世界中に知れわたっていますから、私もイギリスに帰る前に、ぜひ一度お目にかゝりたいと存じます。」
 そんなわけで、私はリリパット皇帝にお目にかゝると、さっそくこんなお願いをしました。
「そのうち私はブレフスキュ皇帝に会いに行きたいと思っているのですが、どうか行かせてくださいませ。」
 皇帝は許してくれましたが、ひどく気の乗らない御様子でした。これはどうしたわけなのか、私にはその頃わからなかったのですが、間もなく、ある人から、こんなことを聞かされました。
 私が使節たちと仲よくするのを見て、
「あれはあゝして、いまにブレフスキュ国の味方になるつもりです。」
 と、皇帝に告げ口した者がいたのです。大蔵大臣のフリムナップと海軍提督のボルゴラムの二人がそれです。
 こゝでちょっとことわっておきますが、私と使節たちとの面会は通訳つきで行われたのです。なにしろ両国の言葉はひどく違っているのでしたが、リリパットの方でも、ブレフスキュの方でも、自分の国
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