A私にケチをつけだしました。そして、私を快く思っていない連中が、何かたくらみをはじめたようです。そのため、二ヵ月とたゝないうちに、私はもう少しで殺されるところでした。
 さて、私が敵の艦隊を引っ張って戻ってから、二週間ばかりすると、ブレフスキュ国から、和睦を求めて、使がやって来ました。この講和は、わが皇帝側に非常に都合のよい条約で、結ばれました。使節は六人で、それに、約五百人の従者がしたがいました。彼等が都に入って来るときの有様は、いかにも、君主の大切なお使いらしく、実に壮観でした。
 私も彼等使節のためには、何かと宮中で面倒をみてやりました。条約の調印が終ると、彼等は私のところへも訪ねて来ました。私が彼等に好意を持っていたことは、それとなく彼等も聞いてわかったのでしょう。彼等はまず、私の勇気とやさしさをほめ、それから、
「われ/\の皇帝も、かねてから噂であなたのことを聞いています。あなたの力業を、ひとつ実地に見せてもらいたいと言っています。どうかぜひ一度お出かけください。」
 と言うのでした。
 私も、すぐ承知しました。しばらくの間、私は使節たちを、いろ/\ともてなしましたが、彼等も
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