フ言葉こそ、一番、古くからあって、美しく、立派な、力強い、言葉だ、と自慢しているのです。そして、お互に相手の国の言葉は、野蛮だ、と軽蔑しているのでした。
しかし、リリパットの皇帝は、敵の艦隊を捕虜にしたのですから、鼻っぱしが強かったわけです。使節団には、書類も談判も、みんなリリパット語を使わせました。もっとも、この両国は、絶えずお互に行ったり来たりしているので、両方の国語で話ができる人もたくさんいます。世間を見たり、人情風俗を理解するために、貴族の青年や、お金持たちが、互に行き来していましたから、貴族でも、商人でも、人夫でも、海岸に住んでいる人々なら、大がい、両方の言葉を知っていました。
前に私が釈放してもらうとき、あの誓約書には、いろ/\情ない役目が決められていたものです。ところが、私は今この国の一番高い位のナーダックになったのですから、あんな仕事は私に似合いません。皇帝ももう、そんなことは一度もお命じにならなかったのです。ところが、間もなく、陛下にたいして、大へんな働きをしなければならない事件が起ったのです。
ある真夜中のこと、私はすぐ門口で、数百人の人が大声で何か叫んでいる
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