チて来て、言葉を教えに来たのだと手まねで言います。私たちは、四時間一しょに勉強しました。私はたくさんの言葉を縦に書き、それに訳を書いてゆきました。短い文章も少しおぼえました。
それにはまず先生が、召使の一人に、「何々を持って来い。」「あっちを向け。」「おじぎ。」「坐れ。」「立て。」というふうに命令をします。すると私は、その文章を書きつけるのでした。それから今度は本を開いて、日や月や星や、そのほか、いろんな平面図、立体図の名を教えてくれました。先生は、また、楽器の名前と音楽の言葉を、いろ/\教えてくれました。こんなふうにして、二三日すると、私は大たい彼等の言葉がどんなものであるか、わかってきたのです。こゝの島は『ラピュタ』といゝます。私はそれを『飛島』『浮島』などと訳しておきました。
私の服がみすぼらしいというので、私の世話人が、翌朝、洋服屋を呼んで来ました。ところが、その洋服屋のやり方が、ヨーロッパの寸法の取り方とは、まるで違うのでした。彼は定規とかコンパスで、私の身体をはかり、いろんな数学上の計算を紙の上に書きとめました。そして、服は六日目に出来上りましたが、その恰好はてんでなっ
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