ワした。が、間もなく、島はこちらの方へ近づいて来たのです。見ると、その側面には、通路が何段にも分れていて、ところ/″\に階段があって、のぼりおりできるようになっています。一番下の通路では、数人の男が長い釣竿で魚釣をしているし、それをそばから眺めている男もいます。
 私はその島に向って、帽子とハンカチを振りましたが、いよ/\近づいて来たので、声をかぎりに叫んでみました。そのうちに、向うでは、私の一番よく見える側へ、人々がぞろ/\集って来ました。そして、彼等は今しきりに私の方を指さしながら、互に顔を見合せているのです。と、四五人の男が階段を駈け上って行ったかと思うと、そのまゝ見えなくなりました。これはきっと誰か偉い人のところへ私のことを告げに行ったのだろう、と私は考えました。そして、それはそのとおりでした。
 人の数が次第にふえてきました。それから半時間ばかりすると、島は上の方へのぼって行き、一番下の道路が、私の立っている丘から、百ヤードぐらいのところに、真正面に見えてきました。私は一生懸命、救いを求めるように話しかけてみましたが、何とも答えてくれません。私のすぐ前に立っている人々は、その
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